新しい曲を決めて、楽譜を買いに行くと、色々な出版社から同じ曲が出ていて、どの版を買えばいいのか迷ってしまうことがあります。
時には楽譜店で長々と、いくつもの版を比較して、どの版を購入するか決めていきます。
何が良くて、何が悪いという事ではないにしても、出版社によって、フレージングや指使い、時に音まで!!様々な違いがあります(例えばエリーゼの為では最後の小節の一音が、版によって違い、どちらの音で小さい頃学んだか、な~んて話も出てきます。)。
私は自分が弾きやすい指使い、原典版にこだわって納得できるフレージングの物、またこの作曲者にはこの版が有名という点で購入を決めます。
でも、何か判断の基準になるものがあれば良いのに、といつも思っていたのですが、
見つけました!!
版について、それぞれの特徴や解説を書いている本
「知って得するエディション講座」 (吉成淳 著 音楽之友 出版)
著書のカバーには
「ピアノ楽譜の版の違い
そこから見えてくる校訂者の考え、時代背景・・・。
作曲家は実際にはどう考えたのか。初版は本当に正しいのか?
演奏解釈に広がる もうひとつの”学習” 」
とあります。
昔、ヨーロッパでは楽譜は銅板(エッジング)によって印刷されることが一般的で、
版刻師といわれる人たちが、手書きの現本を見ながら銅板に掘り込み、それをインクで刷るという作業で
楽譜を作成、出版していました。これを初版と呼びます。
初版を元に他の版が作られていく。
①時に銅板に付いた傷がスタッカートのように見えて(ノイズ)、それが後の版に引き継がれたり、
②意図的に楽譜に演奏のしやすさを考慮して運指を書き込んだり
③版元の教育的な判断でフレージング(スラー)を書き込んだり
④名演奏家が自分の解釈を付けて詳細な注釈を施したり
・・・・・・
こうやって同じ曲でもちょっとずつ違っていくのです。
原典版(ウィーン原典版、ヘンレ版(指番号は後から付記)、ベーンライター原典版):作曲者本来に極力近いもの。但し、同じ原典版でも、元になった資料や編集者の見解によって違いがあります。
この原典版とは別に、編者の意向が運指やスラーを変更や加筆された版も、場合によっては使いやすかったり、より曲の表現が自然になることも。
色々と実際の楽譜を事例に、各版の違いを述べている本です。
大変勉強になり、ためになりました。
結局はその版の違いをどう判断し、どう使うのかは、自分で判断していくことになるのと言う事。
自分にとっての正解というより、版による違いを学んだ上で、自分の演奏にどう反映していくのか、作品の理解を深めていくのか
という事なんだなと思いました。
現在は、より作曲者を尊重し、その作曲と真摯に向き合い作曲者の考えと対峙しながら、自分の演奏解釈を深めていく為にも、原典版を重視する風潮が主流だと数々の講習会などでお話を聞くと感じます。
同じ曲でも各版様々なところから出版していますので、お時間があったら、版を見比べて見てください。
結構違って面白いですよ!